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[小説] ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎)感想



 首相暗殺の濡れ衣を着せられた一般人が国家権力(?)の手からひたすら逃げる話です。
 なんか映画化もされているらしいですね。小説しか読んでません!!!

 同作者の作品も、最初に読んだのは『魔王』……の、漫画版(笑)(ちなみに現在に至るまで原作未読!)他は『アヒルと鴨のコインロッカー』と『死神の精度』しか読んでいません。
 そんな私が語るのはおこがましいんですが、この作者さんは「テーマ(メッセージ性)が強い」という印象があります。声が大きい。
 たぶんハマる人はものすごくハマって痛快だけど、ダメな人はとことんダメで何もかも鼻につくんじゃないでしょうか。
 まぁ私は作者本人じゃないので、「ハイハイ、それが言いたいんですね、くどいわ!」とか思ってたら実は「そんなテーマじゃありまっしぇ~~ん!」ということもあるのかもしれません。あくまでそんな印象を抱かせる文章、ということでいきましょう。

 さて『ゴールデンスランバー』。ビートルズ……というか音楽のことはよく知らないんですが、作中でよく歌われています。
 解散寸前のバラバラなビートルズ、一人寂しく曲をつなぎ合わせてメドレーに仕上げたポール・マッカートニー。故郷に帰ろう。あの頃に戻りたい。(以上、主人公の想像)
 というわけで、この小説のメインテーマとしては、「離れていった旧友たちにも絆は残っているよ!」とか、そんな感じなのかなぁ? と思いました。だってタイトルだし、たぶんそれがメインだよね?
 でもなんか……伝わってくるテーマの割合としては薄いんですよ。
 作中ではマスコミの暴走ぶりや、政治家の腐れっぷり、警察官の走狗っぷりがさんざん描かれています。
 「安全のため」と言っていつのまにか盗撮・盗聴まがいのことをされている監視社会の姿、「犯人逮捕のため」といって一般人の人権がないがしろにされていく様子などがたっぷりと描かれています。
 どっちかっていうと、『権力vs一般人』がメインテーマじゃないの? という感じです。
 批判の矛先を細かく見ていくと、「ようするに書きたいことを思いきり詰め込みまくった結果がこの小説なんだろうなぁ……」と思わされます。

 でも待って! 逆にそれがいい感じ!

 考えてみてください、分厚いハードカバー一冊まるまる公僕批判とかやられてもウザイんですよ。しかも批判の仕方がストレートでわかりやすいと余計うんざりですよ。
 それが批判じゃなくても似たようなもんです。
 ひたすらストレートに「友情! 友情!」って聞かせられると疲れてしまう。
 でもこの作者さんって、ストレートに伝えてくる作風ですよね、たぶん。
 さっき公僕批判やってたと思ったら今度はマスコミ批判、今度は民衆批判、お次は青春回想、友情賛歌、で、監視社会への警鐘! とか、せわしなくやってくれる方が気が紛れます。
 メインテーマが一本突出しているよりも、色んなテーマが混濁している方が鼻につかない。
 もっとも、これは危ういバランスだと思います。
 場合によってはごちゃごちゃしているだけの小説になったかも……?
 この小説はギリギリのところでいいバランスなのではないでしょうか。

 バランスと言えば、それぞれの要素でも。
 政治家を批判しているが、暗殺された首相はまっとうな政治家だったらしいところとか。
 マスコミを批判しているが、そのうちマスコミに協力者が現れるところとか。
 警察を批判しているが、「それが仕事なんだろう」というセリフや、二十年後でのフォローがなされているところとか。
 まぁ後者二つについてはもしかしたら「職業と個人は別だろうけど、君たちの職務内容それでいいの?」てな感じで批判を強めているのかもしれませんが、私はバランスをとるためだと感じて好感が持てました。

 というわけで、最後まで楽しく読めました!

 大衆が敵に回る中、それでも主人公を信じてくれる人がいる類いのシーンはどれも感動的でしたね。爽快でもありました。
 初対面の人も協力してくれたりするので、旧友のありがたみがどんどん薄れていきましたが……(笑)
 まぁ旧友は薄れていた絆を取り戻す系のポジションだからな!
 それにしても、主人公をスケープゴートに選んだ連中は、なぜもっとボッチな人間を選ばなかったんでしょうか……。
 コミュ障な人ならすぐに捕まったと思うよ! 私とか!(笑)

 作中には「人間の最大の武器は『習慣』と『信頼』だ」という言葉が出てきます。
 実際、主人公の何気ない習慣が役に立つシーンが色々とありますが、私はつまり、「毎日マジメに生きているかどうかが信頼に繋がる」ということかな? と思いました。
 例えば、主人公の父親は息子の冤罪を主張していて、カメラに向かって「息子は犯人じゃない。信じているんじゃない、知ってるんだ!」みたいなことを言います。
 ついでに「昔息子がCDを盗んだ疑いを掛けられたとき……」という思い出話を持ち出しますが、実はCD万引きの方は冤罪じゃなかったんですよね、若い頃に魔が差してやっちゃってた。
 親の見る目なんてそんなもの……。この描写が私はとても好きです(笑)
 だって、人間性なんてわからんですよ。
 『信じてる』なんて、薄っぺらいですよ。ヒューマンドラマの定型句でしょ?
 でも父親は『知っている』。何年も息子を見てきたから。
 でもそれは一部間違っている(笑)だって人間は絶対じゃないから。
 でも、例え間違っていたとしても、父親が見てきた息子の姿はそう言いきるにふさわしいものだったわけです。人間は絶対じゃないってことくらい大人なら知っているでしょう。でも父親は言いきれる。
 久しぶりに会った友人たちも最終的には主人公を信じる。「そんなことをする人間じゃない」と言わせるだけの思い出があるから。
 比較的新しい付き合いである職場の人間も主人公を信じる。日頃の勤務態度を見てきたから。
 初めて会った人間も主人公を信じる。なんでやねん。
 いや~、これはたぶん、だいたい雰囲気でわかるんだと思うんです。相手が普段どんな人間として生きてきたか。
 もちろん精度は落ちます。父親のように「知っている」わけがない。友達のように「思い出せ」ないし、同僚のように「見て」いない。
 でも主人公の習慣は、必死の逃亡中でもちゃんと「申し訳ない」とか思える人なので。普通の人が想像する凶悪犯罪者の雰囲気はどうあっても出せないでしょう。
 日々どのように生きてきたか、それこそがその人を表している。
 だから『習慣』と『信頼』。
 これがメインテーマだったらいいな、なんて思いました。

 それにしても、伏線がどんどん回収されていくのが気持ちのいい小説でした。
 「これどうせ、後からこんな展開になってこんな使われ方するんでしょ?」という伏線も、実際そのシーンが来ると「来た来た来たぁ……っ!」気持ちいい。
 もちろん「ここで出てくるのか!」というのもあって、わくわくしました。

 結末は~ラストの展開はね~。まぁしょうがないよね。
 途中言い訳のように「鯨に会ったら逃げるしかない」と繰り返しているのがちょっと残念だったけれども。
 結果もその後も、最後の最後まで面白かったです!

 あーでも、思ったことがある。
 暗殺された首相を主人公にして、政界の巨悪たちを打ち倒しつつ、この国の腐りきった部分を浄化して、素晴らしい国作りをするファンタジー小説書いてくれないかなぁ……と。
 いやー、権力vs一般人の構図ってだいたい決まってくるじゃないですか。
 批判したいことに対して、充分是正しうる人間を正義の主役に据えた場合、この作者さんはどういう小説を書くのでしょうか。
 まぁ首相なんてそんなスーパーマンなポジションじゃないとは思いますけど。
 それでも一般市民一人のハッピーエンドとは比べものにならないほどの、超弩級のハッピーエンドが見られると思うんですよ。
 ファンタジーでいいからぁ!

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